REVIEW

乙武洋匡さん (作家)

静謐な環境で交わされる言葉。一枚ずつ剥がされていく心のヴェール。
まるでカウンセリングを受けているかのような不思議な体験だった。

河瀨直美さん (映画監督)

誰かと触れ合うこと、重ねること。
それはとても勇気のいることだ。
やがて、登場人物達がコミュニケーションを持つことを、
裸で成そうとする行為は、リアルで生々しい。
カメラを通してでしか接触できなかった世界が色づき始める頃、
彼らの人生の色とりどりが観てとれて、心がざわめきだす。

大久保佳代子さん (タレント)

人に触れたくなったし、それ以上に触れて欲しくなった。
信頼できる人に「私の裸を見てほしい」。
50歳に近づいた今、自分の身体とセクシャリティにきちんと向き合わねば。
なんとなく諦めてしまうのは、自分の身体に申し訳ない。

三浦瑠麗さん (国際政治学者)

この映画を観ている125分間は観客にとっての癒しのプロセスだ。
なぜ性によって傷つくのか。
多くの場合、私たちは自分自身によって、植え付けられたタブーによって傷ついている、
とトランスジェンダーのハンナや、障がいをもつクリスチャンは教えてくれる。
自らを包む固い殻が、自分を守るためではなくて感情や欲望を抑圧しているからなのだと気づいたとき、
ローラもわたしたちも自由になる。
映画はやさしく、少しずつわたしの心と体の中に入ってくる。
双方向で対等な監督の作品づくりにヒューマニズムをみた。

牧村朝子さん (文筆家)

正直、「また“障害者や性的マイノリティに学ぶ自分らしい生き方”みてぇな映画に
当事者枠からお墨付きコメントもらおうとしてんの?」って警戒感MAXで観ました。
もしそれ系の映画だったら推薦コメント出さないんですけど、違ったわ。
安心できる場所で、休憩とりつつ観て欲しいです。
この映画、観る人をこそ映します。

HIKARIさん(映画『37セカンズ』監督/映画監督/脚本家/ プロデューサー)

欲望。トラウマ。真の愛。全ての感情がふつふつと沸き出てくる。
普段私たちが閉ざしてきた心にしっかりと目を向けさせ、これまで避けてきた過去や人間関係に、
全身全霊で「ぶつかっていけ」と勇気を与えてくれる。
自分が自分であることの再確認、存在する意味、そして、私たち人類全てが「一人じゃない」ということをも思い出させてくれる。
何も隠さず、真っ裸で、まっしぐらに突き刺さってくるこの映画を、どうか体感してください。
そして心を真っ白に塗り替えた際には、また新たな自分をきっと発見することでしょう。

斎藤工さん (俳優/映画監督)

コロナ禍により人と人は引き離された、
コロナウィルスは人が人に触れる事を遠ざけた、
そんな今だからこそ本作の訴えが猛烈に痛烈に己の皮膚に伝わってくる。

有村昆さん (映画コメンテーター)

この映画により「感動ポルノ」と言われていた時代は完全に過去のものになるであろう。
LGBTやポリティカルコレクトネスの進化させた一本!
リモートの昨今、人の温もりを感じた。

志茂田景樹さん (作家)

リアルな息を呑むシーンに、隠れていた真実があらわになる。
その真実の凄みに言葉を喪失した。

髙嶋政宏さん (俳優)

性癖とは全てを超え全人類に平等に与えられた権利。
マイノリティの性。本物と役者との競演。
人間の皮膚の超クローズアップが美しい。
“普通なんて、知るか!”監督が、この作品に込めた奇跡が皮脂に食い込んでとれない。

武田梨奈さん (俳優)

あるようでない壁。ないようである壁。
スクリーンに映し出されたのは、丸裸の心と体でした。
この映画はフィクションなのか?ノンフィクションなのか?惑わされながらも、
演者たちが叫ぶ魂を私はただひたすらに体感しました。

フィフィさん (タレント)

普通に縛られずに、肉体を解放して自分と正直に向き合えたら、
どれだけ楽に生きられるだろうと、自分と違う誰かが自分と重なって苦しくなるのに、
救われるような、不思議な感覚になる映画だった。

しみけんさん (AV男優 / 男女の仲研究家)

自分が輝ける生き方を見つけた人を直視するとき、まぶしすぎて目をそらしてしまう時があります。目をそらしてしまった人はどこか「理性みたいなもの」に縛られているのかもしれません。
それが性にまつわる事ならなおさらです。
貴方はこの"輝ける生き方"を直視し続ける事ができるでしょうか?
先ずは開始1分にて。

コトブキツカサさん (映画パーソナリティ)

感情にフィルターをかけて苦しむなら、解放して自由になるしかない。
自由が冒険なら、好奇心と欲求を糧に行動するしかない。
多様なセクシャリティを肯定する、圧倒的なセラピー・ムービーを体験しました。

ヴィヴィアン佐藤さん (ドラァグクイーン / 美術家)

トランスジェンダーのカウンセラーや、
自動車椅子の方や、SM女王様など、、、
ほとんど身近にいる方々です。
これはマイノリティだけではなく人類共通の物語!
素晴らしかったです!!! 

清水晶子さん (東京大学教授/フェミニスト/クィア理論研究者)

映画において視線が欲望と重ね合わされてきたとすると、
ここにあるのは、視線を、欲望すらおしとどめかねない容赦ない親密さへと繋げる試みである。
しかし同時に、あくまでレンズを通して対象に触れるその親密さは、どこか乾いた禁欲性をも帯びている。
裸体が溢れ返るだけの安易な近しさや退屈なエロティシズムとは一線を画し、
親密さが時に突きつける居心地の悪さを見据えつつなお親密さを痛切に希求する野心作。

児玉美月さん (映画執筆家)

映画と触覚の可能性についての挑戦的な哲学があり、
自己と他者の関係についての根源的な美学がある。
「物理的距離」がもたらされた今を生きる私たちに、
映画『タッチ・ミー・ノット』は親密さを問い直す契機を与えてくれるだろう。

金子遊さん (批評家 / 映像作家)

監督らしき人物が、夢や母親とのフロイト的な無意識に潜在する葛藤を探求するというテーマの提出と、父親の見舞いに通う女性が、抑圧された性を身体接触を含めたセラピーに参加するというフィクションの物語が呼応している。
そこに、実在する性倒錯者、障がい者など、さまざまな人物が登場し、演出された場面なのか、インタビューやドキュメンタリーなのかというあわいのなかで、主軸たるストーリーに絡んでくる。
何よりも映画をつくっていくプロセスというものを映画内に示しながら、その場で生じていったできごとや言葉を、虚構と事実にわけることなく、オーガニックにつないでいるところにアピチャッポン的なものを感じました。映像や色彩の設計に関しても、映画というよりは現代アートにおける映像作品に近い感触をおぼえました。
このような先鋭的な作品が、映画祭できちんと評価されるとは、ベルリンはさすがだと感心します。